PFASの地下水汚染は水質検査だけで把握できる?濃度とフラックス評価を解説

コラム

第4回 濃度とフラックス評価の必要性を解説

PFASによる地下水汚染への関心が高まる中、自治体や事業者が行う地下水調査では、水質検査(採水分析)が基本となっています。しかし実際には、水質検査だけで汚染の全体像を把握できるとは限りません。本稿では、水質検査で分かることと限界、濃度だけでは捉えきれない汚染の「動き」を評価するフラックスという考え方、そして補助的な調査手法(iFLUXサンプラーなど)の位置づけについて整理します。

水質検査で分かること

一般的な地下水調査では、観測井戸などから採水した試料を分析機関に提出し、PFAS濃度を測定します。この方法は、対象地点における採水時点のPFASの存在の有無や濃度の高低を直接把握できる基本的な調査手法です。

例えば、「A地点で500ng/L、B地点で200ng/L」といった結果が得られた場合、それぞれの地点における濃度の差は把握できます。こうした情報は、現状把握や法的な基準値・目標値との比較において重要です。なお、ここで挙げた数値は理解を助けるための説明用の仮想例であり、特定の地域や実測値を表すものではありません。

出典:環境省「有機フッ素化合物(PFAS)について」(参照:2026年2月時点)
https://www.env.go.jp/water/pfas.html

出典:環境省「PFASに関するよくある質問」(参照:2026年2月時点)
https://www.env.go.jp/water/pfas/faq.html

しかし濃度だけでは分からないこと

地下水の汚染状況を評価する際には、濃度だけで判断できない場面があります。地下水は常に流れており、PFASもその流れに沿って移動しています。そのため、「どの方向へ流れているのか」「どのくらいの速度で流れているのか」「汚染が将来どのように広がり得るのか」という情報は、濃度だけでは把握できません。

実際の評価では、調査地点の選定、採水時期、地下水の流向・流速、土壌や地質の状態、対象PFASの物質特性などを総合的に検討する必要があります。

出典:環境省「PFASに関するよくある質問」(参照:2026年2月時点)
https://www.env.go.jp/water/pfas/faq.html

川に例えると分かりやすい

濃いインクをコップ1杯だけ流した川と、薄いインクをバケツ1杯流した川とでは、どちらが多くのインクを運んでいるでしょうか。

濃度の差だけで比べると前者のインクの方が濃いですが、川が運んだインクの総量で見ると後者の方が大きい可能性があります。地下水中のPFASも同様に、濃度だけでなく、どれだけの量が移動しているかという視点が加わることで、評価の幅が広がります。

フラックスという考え方

フラックス(Flux)とは、一般に単位面積・単位時間あたりに移動する物質量を表す概念です。地下水汚染の評価では、対象地点におけるPFAS濃度だけでなく、地下水の流向・流速、観測断面などを組み合わせることで、「汚染物質がどの程度移動しているか」を評価する考え方として用いられます。

なお、フラックスの算出方法は、用いる測定・推定手法や前提条件によって定義や扱いが異なります。単純に濃度と流速を掛け合わせるだけでなく、観測井戸の設置条件や採水方法、断面の仮定などに応じた検討が必要となる点に注意が必要です。

出典:環境省「PFASに関するよくある質問」(参照:2026年2月時点)
https://www.env.go.jp/water/pfas/faq.html

濃度とフラックスの違い

一般的な濃度評価

水質検査で得られる濃度は、採水した時点・地点における値です。規制値との比較や、汚染の有無を判定する基礎情報として広く用いられています。

フラックス評価

フラックス評価は、濃度に加え地下水の流動に関する情報を組み合わせ、汚染物質の移動量や拡散の傾向を推定する考え方です。汚染源の推定や将来予測、対策の優先順位付けなどに活用されることがありますが、その評価結果は調査設計や仮定に依存します。

一般的な水質検査とiFLUXサンプラーの特徴比較

項目一般的な水質検査iFLUXサンプラー
対象採水時点の地下水設置期間中の地下水
主な指標PFAS濃度PFAS濃度および地下水中の移動状況
得意な評価現状把握、規制値との比較汚染の広がり方や移動傾向の把握
時間的な性質採水時点のスナップショット設置期間中の平均的な傾向
活用場面定期モニタリング汚染源の推定支援、詳細調査
調査の役割「どれだけあるか」を調べる「どのように動くか」を調べる
位置づけ基本的な調査手段既存調査を補完する補助的手法

両者は競合する手法ではなく、それぞれ異なる視点から地下水汚染を評価するための補完的な調査手法と位置づけることができます。

iFLUXサンプラーが提供する視点

iFLUXサンプラーは、地下水中へ一定期間設置することで、対象期間における汚染物質濃度や地下水の動きに関する情報を取得し、汚染物質の移動量評価を支援するパッシブサンプリング技術とされています。

従来の採水調査が採水時点の濃度を捉えるものであるのに対し、iFLUXサンプラーは設置期間中の地下水の挙動を評価する特徴があるとされます。ただし、その精度、適用条件、法規制への適合性、対象物質の範囲などは、対象地域の地盤特性、調査設計、装置仕様等によって異なるため、活用にあたってはメーカーの技術資料・仕様を確認する必要があります。

※iFLUXサンプラーの性能・適用条件・認証等の詳細については、メーカーの公式情報(iFLUX Technologies)を確認のうえ、調査目的に応じた利用可否を検討してください。

出典:iFLUX Technologies「iFLUX Sampler 製品情報」(メーカー公式情報(参照:2026年2月時点))
https://www.iflux.com/

調査で重要な考え方

PFASの地下水調査では、現時点でどこに存在するのかだけでなく、将来どこへ移動し得るのか、汚染源はどこにあるのかを把握することが、対策の検討において重要となります。

そのため、濃度測定だけでなく、地下水中での挙動を理解するための情報が求められており、フラックス評価はその有効な手段の一つとして注目されています。ただし、調査結果の解釈は対象地域の水文地質条件、対象物質、採水・設置条件などの影響を受けるため、一つの調査だけで汚染の全体像を確定的に把握することは困難です。

なお、2026年4月1日からは、PFOSおよびPFOAについて水道水の水質基準(合算値で50ng/L以下)が適用されています。これは水道水に関する基準であり、地下水調査における評価そのものを直接規定するものではない点に注意が必要ですが、汚染源対策や水道事業者との連携を検討する際の重要な指標となります。

出典:環境省「水質基準に関する省令の一部を改正する省令及び水道法施行規則の一部を改正する省令の公布等について」(2025年6月30日公布)
https://www.env.go.jp/press/press_00075.html

出典:WHO「Assessing the occurrence and human health risk of per- and polyfluoroalkyl substances (PFAS)」(参照:2026年2月時点)
https://www.who.int/activities/assessing-the-occurrence-and-human-health-risk-of-per–and-polyfluoroalkyl-substances

まとめ

PFASの地下水汚染を把握するためには、水質検査に加えて、汚染の広がり方や移動の傾向を捉える視点が有効です。

水質検査は濃度という「点」の情報を提供し、フラックス評価は汚染物質の移動という「流れ」の情報を提供します。両者を状況に応じて組み合わせることで、地下水汚染の全体像をより立体的に理解できる可能性があります。

調査を計画・発注する際には、対象地域の水文地質条件、想定される汚染源、規制動向、調査期間中の濃度変化などを総合的に勘案し、目的と費用対効果に応じた調査設計とすることが望まれます。

※本稿は一般的な情報提供を目的としており、特定の調査や対策の推奨を目的とするものではありません。具体的な調査計画については、水質・地質・法令の専門家や自治体、関係機関にご相談ください。

補足:水質検査とiFLUXサンプラーの主な相違点

一般的な水質検査はPFASの濃度という「点」の情報を得る基本的な手法であり、iFLUXサンプラーは濃度に加え地下水の移動に関する情報を取得する補助的手法とされています。両者は競合する技術ではなく、調査目的に応じて組み合わせることで、地下水汚染の評価における情報の幅が広がります。

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