PFASが地下水から見つかるとなぜ問題なのか?原因・健康影響・調査のポイントを解説

コラム

近年、新聞やテレビ、自治体の発表などで「地下水からPFASが検出された」というニュースを目にする機会が増えています。前回のコラムでは、PFAS(有機フッ素化合物)の基礎知識や世界的に注目される背景をご紹介しました。今回はその続編として、PFASが地下水から見つかることがなぜ問題視されるのか、地下水への移行の仕組み、飲料水との関係、自治体調査の意味、そして見つかったときの基本的な対応の流れについて、公的情報をもとに分かりやすく解説します。

なお、PFASは1万種類以上あるとされる物質群であり、その性質や健康影響は物質ごとに異なります。本稿では、特定のPFASについて研究で報告されている内容や、国内外で規制・リスク管理の対象となっている物質の情報を中心に整理しています。

PFASはどのように環境中へ広がるのか

PFASの環境中への放出経路

PFASは炭素とフッ素の強い結合を持つため、物質ごとに差はありますが、自然環境中では分解されにくく、長期間にわたって残留する可能性があることが知られています。

出典:環境省「有機フッ素化合物(PFAS)について」
https://www.env.go.jp/water/pfas.html

環境中へPFASが放出される経路としては、工場や事業所からの排出、泡消火薬剤(AFFF)の使用、廃棄物処分場からの流出、過去に使用されたPFAS含有製品などが挙げられています。日本においては、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)やPFOA(ペルフルオロオクタン酸)といった特定のPFASについて、難分解性・高蓄積性・長距離移動性という性質を持つことから、規制やリスク管理の対象とされています。

出典:US EPA「Our Current Understanding of the Human Health and Environmental Risks of PFAS」
https://www.epa.gov/pfas/our-current-understanding-human-health-and-environmental-risks-pfas

土壌から地下水への浸透

PFASには水へ溶けやすい性質を持つものがあり、工場、泡消火薬剤、廃棄物などの発生源から環境中へ放出されると、降雨や地下水の流れなどを通じて地中へ浸透し、地下水へ移行する可能性があります。ただし、移行のしやすさは物質の種類(鎖長や構造)や土壌の性質、地下水の流向などによって異なります。

出典:WHO「Assessing the occurrence and human health risk of PFAS」
https://www.who.int/activities/assessing-the-occurrence-and-human-health-risk-of-per–and-polyfluoroalkyl-substances

なぜ地下水から検出されるのか

地下水の特性

地下水は、地表から浸透した雨水などが土壌や地層をゆっくりと通りながら蓄えられた水です。河川や湖のように地表で見える水と異なり、地下水の汚染は目に見えないため、地上からは広がりや進行状況を把握しにくいという特徴があります。

PFASが地下水に移行しやすい理由

PFASの中には水へ溶けやすく、比較的移動しやすい性質を持つ物質が存在します。そのため、過去にPFASが使用されていた発生源から離れた地点でも、地下水を通じて検出される場合があります。また、地下水の流向や地質、PFASの種類によって、移動速度や到達範囲は異なります。

見えない拡散という特徴

地下水は目に見えないため、汚染が広がる範囲を直感的に把握することは難しいとされています。このため、PFAS汚染を評価するには「検出された濃度」だけでなく、「地下水がどの方向に、どれだけの速度で流れているのか」という視点も重要になります。

飲料水・生活用水との関係

地下水の用途

日本では地域によって、地下水が水道水源、飲用井戸、農業用水、工業用水などとして利用されています。地下水の具体的な利用状況は地域ごとに異なり、すべての地域で飲料水として使われているわけではありませんが、一部の地域では飲料水源としての役割も担っています。

出典:環境省「PFASに関するよくある質問」
https://www.env.go.jp/water/pfas/faq.html

人への曝露の可能性

地下水中や水道水源にPFASが含まれている場合、飲料水や食物を通じて人の体内に取り込まれる可能性があります。ただし、PFASが検出されたこと自体が直ちに健康被害の発生を意味するわけではなく、健康影響は物質の種類、濃度、曝露期間、曝露経路などによって異なります。日本においては、食品安全委員会が2024年6月25日に取りまとめた食品健康影響評価書において、PFOS・PFOAなどについて評価が行われています。

出典:食品安全委員会「有機フッ素化合物(PFAS)の評価に関する情報」
https://www.fsc.go.jp/osirase/pfas_health_assessment.html

日本の水道水質基準との関係

日本では、PFOSとPFOAについて、2026年4月1日から水道水の水質基準が適用され、2物質の合算値で50ng/L以下と定められました。これにより、水道事業者等には検査実施と基準遵守の義務が課されます。なお、この基準はPFAS全体に対するものではなく、PFOSとPFOAの合算値に関する基準です。公共用水域及び地下水については、引き続き指針値としてPFOS及びPFOAの合計値で50ng/L以下が示されています。

出典:環境省「水質基準に関する省令の一部を改正する省令等について」(2025年6月30日公布)
https://www.env.go.jp/press/press_00075.html

なぜ自治体は地下水調査を行うのか

調査の目的

自治体がPFAS調査を実施する主な目的は、現状把握、住民への説明、水源の保全、そして汚染源の特定にあります。これらの調査は、「PFASがあるかないか」を確認するだけでなく、「どこから来たのか」「どこまで広がっているか」を把握し、住民の不安に応え、将来の水源管理に役立てるために行われています。

濃度だけでは分からないこと

地下水は流れているため、検出地点と汚染源が地理的に一致するとは限りません。したがって調査では、PFASの濃度だけでなく、地下水の流向、流速、過去の発生源情報などを組み合わせて評価することが重要とされています。単に濃度を見るだけでは汚染の全体像を把握できない場合があります。

PFASが見つかったときの一般的な対応の流れ

基本的な対応ステップ

自治体や水道事業者等では、一般的に次のような流れで対応が進められます。まず追加調査により汚染範囲を把握し、次に周辺地域の水利用状況を確認し、過去の情報等も踏まえて汚染源を推定します。その上で、継続的なモニタリングや、必要に応じた水源の切替・浄化などの対策が検討されます。

地下水の流れを把握する重要性

PFASは地下水の流れに沿って移動する可能性があるため、単に濃度を見るだけでは十分な評価ができない場合があります。したがって、汚染範囲や将来の影響を推定するには、地下水がどの方向へ、どれだけの速度で流れているかといった水文情報の把握が重要となります。

まとめ

PFASが地下水から見つかることが問題視される背景には、分解されにくさ、目に見えない拡散、そして飲料水や生活用水への利用という3つの要素があります。これらの要素が重なるからこそ、濃度や汚染源、そして地下水の流れを正しく把握することが重要とされています。

PFASの環境中での挙動は物質の種類や地域の条件によって異なるため、「見つかった=危険」と単純化せず、公的機関の情報をもとにした冷静な理解が大切です。次回は「PFASが検出されたら何をすればよいのか?」をテーマに、自治体・事業者・住民それぞれの視点で基本の対応を整理します。

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